トム・ソーヤーで投資教育?
※この記事、利息計算が間違ってます。すみません。
毎日の受取り利息が定額なので、ふつうの複利計算よりトータルの利息が少なくります。
結果の数字はあまり違わないはずですが。
後日訂正します。
こどもが学校の図書館で「トム・ソーヤーの冒険」を借りてきました。
「トム・ソーヤーの冒険」は、子どものころに読んだ方も多いと思います。
墓場の殺人事件とか、インジャン・ジョーとの対決とか、洞窟での遭難とか、わくわくどきどきの小説ですよね。
さて、物語の最後にトムとハックは、12,000ドルの金貨を手に入れ、半分の6,000ドルずつ分けます。
で、このお金をおとなたちが年利6%で運用するよう取り計らってくれるのですね。
こどものころ私が読んだ本には、平日は毎日1ドル、日曜日は0.5ドルの利息が得られる、そして一方、当時こども一人にかかる費用は週1.5ドルであったと書かれていたと記憶しています。
ということは、トムは小学生にして毎週5ドルずつ自動的に資産を増やせる人になったわけです。
なんてすばらしい! と、こどもながらに思ったものです。
「トム・ソーヤーの冒険」は楽しいばかりでなく、なんと資産運用の第1の原則(?)である「金利」の力も学べるお話なのです。
簡約版だと、このあたりの記述を省略してしまう場合もあるみたいなので注意が必要です。
我が子が借りた「青い鳥文庫」版では、
「ダグラス夫人は、ハックのお金をあずかり、利子がつくようにしてやった。(中略)その利子のおかげで、二人の子どもは、一週に六ドル以上ものお金がはいってくるようになった。そのころは、牧師さんでも、それだけの給料はもらっていなかったのだ。」(引用:トム・ソーヤーの冒険(新装版)講談社青い鳥文庫)
です。
まあまあ合格というところでしょうか。
お子さまに「トム・ソーヤー」を買って(あるいは借りて)あげる際は、ぜひ最後の数ページにご注意ください。
ところで
年利6%というと360ドルですよね。
平日に1ドル、日曜日に0.5ドルとすると、52週(364日)で339ドル、プラス平日が1日と考えてトータル340ドルです。
あれれ? 計算が合わない。
シンプルに「毎日1ドル」と書けば、年に365ドルになりますから、よっぽど360ドルに近くなります。
小学生当時の私はこのあたりにまったく疑問を持たず、単純に「日曜日は銀行もお休みだから0.5ドルなのかな」くらいに思っていましたが、マーク・トウェインはなぜ、わざわざ日曜日の収入を半分にしたのでしょうか?
この0.5ドルの謎はどうやら、資産運用第2の原則(?)にして「人類最大の発明」たる「複利」にあるようです。
「重箱の隅」感がありますが、ちょっと計算してみます。
「日曜日は0.5ドル」のような場合分けは面倒なので、毎日一定の利息をもらうとしましょう。
1日複利の利率をpとすると、6,000ドルが1年後に6,360ドルに増えるということは、
6000 × (1 + p)^365 = 6360
という式になります。電卓で計算してみると、p = 0.01597(%) でした。
つまり、毎日6,000 × p = 0.9582ドルの利息を受け取って再投資すると、1年後には360ドルになっているわけです。
一方、曜日にかかわらず毎日1ドルずつ受け取るとすると、p は、1/6000 = 0.01667(%)です。
これを毎日再投資した場合、1年後の利息は376ドルになり、16ドル多くなってしまいます。
「平日1ドル、日曜日0.5ドル」(小説のケース)はp = 0.01553(%)に相当し、複利運用した場合の年間利息は350ドルで、「毎日1ドル」の場合より360ドルに近くなります。
ということで、マーク・トウェインは、実質の年利を6%に近づけるために「平日1ドル、日曜日0.5ドル」としたのだと思います。
なんと奥が深い...
とまあ長々と書きましたが、話をまとめますと、
- 「トム・ソーヤーの冒険」は楽しい
- しかも「金利」を教えてくれる
- 深く追究すると「複利」の力まで考えることができる
- ただし簡約版の場合は、省略度合いに注意が必要
です。
おまけ
原文で確認してみたら「平日1ドル、日曜日0.5ドル」ではなく「平日全部と日曜日の半分に1ドル(a dollar for every week-day in the year and half of the Sundays,引用:Electronic Text Center, University of Virginia Library)」でした(私の記憶違いか、訳者が意訳したのか)。
「平日全部と日曜日3回のうち2回に1ドル」だったら、年間利息は358ドルと、さらに360ドルに近くなります。
「マーク・トウェインが複利計算を考慮しながら、そこまでリアルには書かなかったのはなぜ?」と想像するのも、楽しいですね。